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HIV/エイズガイド

社会福祉を専攻する大学3年生のブリ君がいろいろな人と出会って、
聞いた、HIV/エイズをめぐる7つの話。

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第6話君の話を聞いてくれる人はこんなにいる!

笹江
笹江

NPO法人「たちばなの会」の事務局長で、
HIV感染症にかかわるさまざまな相談業務などにあたっている。
めっちゃ多忙。

ブリ君
ブリ君

大学3年生、ゲイ、21歳。専攻は社会福祉論だが、勉強はあまり好きではない。
クラブは水球部。ガチムチ気味。

HIV/エイズについての相談機関の紹介と活用の仕方

ブリ君

えーと、ここだ、ここだ。NPO法人「たちばなの会」、っと。ピンポーン。こんちはー、ブリと申します。笹江さん、いらっしゃいますかぁ~。

笹江

ハイハイ、ブリ君。いらっしゃい。お待ちしてました。

ブリ君

きょうはありがとうございます。あの、電話でもお話したんですけど、大学の社会福祉論の授業で、「相談」についてなにかレポートを書きなさい、ていう課題が出たんです。それで、「エイズと相談」ということで調べてみたらいろいろなことが書けるんじゃないかなと思って、きょうはインタビューに来ました。

笹江

そうなんだ。私たちの「たちばなの会」は、エイズやHIVについて不安や悩みをもった人、それから陽性者やその周囲の人のために、いろいろな相談事業やサポート活動をやっているNPOだよ。HIV/エイズにかかわるいろいろな人の支えになれたら、という思いで続けています。

ブリ君

「ソーシャルリソース」、社会的資源という言葉を授業でも習ったけど、「たちばなの会」もそのソーシャルリソースの一つですね。そうしたソーシャルリソースを普段から知っておいて、いざというときは上手に使うことが大切みたいですね。

笹江

その気になって探すと、現在はかなりリソースがあるよ。そもそもブリ君だって、エイズについて自分が不安なことはないのかな?

ブリ君

え、僕がですか~!

不安は心のサイン、耳を傾けてみよう

笹江

多くの人が思うのが、「もしかして、自分、感染してるかも」という不安だね。これを感染不安というよ。

ブリ君

僕だって、そういう不安を感じないことはないです。最近しばらく検査受けてないんで、自分のいまのステータスだって、どうなのかな……。

笹江

いつもなら気にも留めなかったのに、突然HIV感染がとても身に迫って感じられて、すごく不安になることがあるね。友だちの感染を聞いたときとか、ハッテン場でちょっと危険なセックスをしてしまったときとか。でも、「不安」は君の心のサインなんだ。

ブリ君

不安でたんにオロオロするんじゃなくて、いままでのセックスのやり方を見直したり、自分なりのセーファーセックスの基準(ガイドライン)を決めなおしたりする時期として受け止めることが大事なんですね。あと、積極的に情報をフォローアップしてみるとか。

笹江

そうだね。12月1日は世界エイズデーで、いろんなキャンペーンが行なわれることは知ってるかもしれないけど、不安を感じた日が、君にとっての世界エイズデーだね。そんなとき、ブリ君はひとりで考えたり情報を探したりすることができるみたいだけど、もし自分ひとりで見直すのは難しい、したくない(怖い?)というときには、こんな方法もあるよ。

情報を集めよう

電話相談を利用しよう

感染を知ったとき、知らされたとき

ブリ君

陽性の告知を受けてショック!というときにも、相談することができますよね。

笹江

もちろん!陽性の告知には、いくつかのパターンがあるね。自発的に保健所やクリニックなどで受けた検査で陽性であると告知された場合もあれば、体調不良で入院して、そこでいろいろ調べた結果、陽性がわかった場合もある。あるいはなにかの手術をするまえに、通常の術前検査で突然、陽性がわかる場合もあるね。自発的に受けたなかには、郵送検査キットで陽性とわかってひとりきりで結果を受け止めるということもあるよね。それから、イベントの検査で友だちと一緒に受けて、自分だけ陽性だったということもあるかもしれない。結果はおなじ陽性でも、場合場合で感じ方は違うだろうね。

ブリ君

そのショックから、どうしたら立ち直れるのかなぁ。

笹江

やはりだれかと相談しながら感情や考えを整理すること。この病気は急激に悪化するわけじゃなく、ある程度は時間があるから、ゆっくり考えることだね。まだまだネガティブなイメージがある病気なので、つい悪い方向に想像が向かいがちだけど、情報を集めてみれば、事実はけっしてそうではないこともわかるはずだよ。

ブリ君

相談したいと思ったら、どんな人に相談すればいいんですか。

笹江

検査を受けたところが保健所や検査場なら、相談機関についての情報も提供しているから、そこからいろいろなところへアクセスしてみよう。郵送検査の場合は、相談機関などの情報を提供しているところもあるけど、そうでないところもあるから自分で調べたりする必要があるかもしれない。
まず、さきにも話したように、私たちのようなサポート機関がいろいろあって、匿名・無料の電話相談や、希望なら面談を提供しているから、ぜひ積極的に利用してほしいね。

それから病院にかかることになったら、当然その病院で相談ができる。エイズ治療拠点病院ではHIV感染症について知識や経験のあるカウンセラーやソーシャルワーカーがいたり、あるいは看護師でもHIVの専任看護師(コーディネーターナースと呼ばれたりする)をおいている病院もあるので、主治医などに聞いて積極的に利用してみることだね。 もちろん検査を受けた保健所でも、保健師や医師に相談することができるよ。

あと、HIV感染症は内部疾患として障害者手帳の対象になっているね。行政の障害福祉の窓口では、手帳の申請や医療費の公費負担などの福祉制度についていろいろ相談することになるし、手帳を取得したあとも、公費負担申請の毎年の更新などで、ずっと相談したりお世話になるね。

いずれにしても、どうしたらいいかわからない気持ちだったのが、だれかに相談することで、なにが問題なのか、自分はなにが不安なのかが明確になり、今後どう行動したらいいのかが見えてくることが、相談の大きな役割なんだ。

ブリ君

なるほど。じゃあ、身近な友だちなんかでもいいのかなぁ?

笹江

その人が「HIV陽性」という大切なプライバシーを守ってくれるなら、その人に話を聞いてもらうのもいいよ。でも、ときどき聞いた側が混乱して逆パニックになったりする場合もあるので、相手は慎重に選ぼうね。聞き手が混乱した場合には、プライバシーを誰かに話してしまう場合もあるし、相手のフォローをするのも大変。

ブリ君

そうですね、守秘義務って大事ですね。とくにHIV陽性みたいな問題だといっそうね。じゃ、逆に自分がだれかに相談された場合、気をつけることがありますか?

笹江

多くの場合、知らせる陽性者は、なにかをしてほしいというよりも、気持ちを受け止めてほしい、わかっていてほしいという気持ちで知らせる場合が多いみたい。告知直後などは、相手も不安や混乱のなかにあることが多いので、一緒に気持ちの整理をするのを手伝ってあげてください。でも、自分には荷が重いと感じる場合には、自分で抱えこまずに、相談サービスの利用や医療機関のスタッフなど専門家に相談をすることを勧めようね。

ブリ君

これまで僕は、あまりポジを打ち明けられたことはないけど、やっぱりそれほど陽性の人はいるわけじゃないということかなぁ。

笹江

ブリ君が感染していることがわかったら、友だちに話すかい?話すかもしれないけど、かなり慎重になるんじゃないかな。もしかしたら、自分の感染に気づいている人は周囲にけっこういるかもしれないよ。でも、相手が受け止めてくれそうかどうか、迷っているのかもしれない。まわりにポジの人がいてあたりまえ、そう考えておくぐらいがちょうどいいのかもしれないね。

他のポジティブの人に会ってみよう

ブリ君

いままでは電話相談みたいに匿名でできる相談、それから陽性者への専門家による相談などを教えてもらいましたけど、ほかにはどんなソーシャルリソースがあるんですか。

笹江

陽性者の人どうしが交流するスペースや勉強会なども、いろいろ開催されているね。専門家から学べることもあるけど、おなじ立場の人から学ぶことも、とっても多いんだ。

ブリ君

ピアサポート、って言うんでしょ。それも社会福祉論の授業で習ったよ。

笹江

ピアは、おなじ同士とでもいう意味かな。でも、「もし、その場に知りあいがいたらどうしよう」という不安がある場合には、ブログやHIV陽性者専用のSNS(ソーシャルネットワークサービス)を試してみるのもいいね。感染がわかったばかりの時期の経験や、いまの生活について生身の文章を読むことができ、きっと参考になるよ。感染してない人が読んでも、もちろん「へー、陽性の人ってこんなこと思ってるんだ」ってわかるはず。

ブリ君

直接会って話したいという場合には、どこへ行けばいいんですか?

笹江

東京、大阪、名古屋、京都、札幌、福岡、金沢などには、定期的に開催されているHIV陽性者のためのミーティングがある。不定期だけど仙台、新潟、高崎、川崎、広島、沖縄などでも開かれているね。ミーティングに参加することに不安がある場合には、そのミーティングの主催者に連絡をとり、事前にやりとりをしておくと参加しやすくなるね。また、ブログやSNSでやり取りしたひとと実際に会ったりするひともいるし、オフ会が各地で開かれたりしているようだよ。

ブリ君

陽性者といっても、かならずしも訓練を受けた専門家じゃないわけで、そこはプラスとマイナスの両側面を見ておかないといけないんじゃないですか?

笹江

そうなんだ。他の陽性者と交流することで、自分はひとりではないことが確認できて、きっと勇気がもらえると思うよ。でも、一人ひとり情況の個人差も大きいので、参考にできる部分とそうでない部分があるね。特定の個人とだけつきあうんじゃなく、なるべく複数の人たちと交流すると、バランスよく見ることができるんじゃないかな。

ブリ君

陽性者スペースは陽性者オンリーが普通だけど、だれでも行ける場所ってありますか?

笹江

それこそ、最初に言ったコミュニティセンターがあるよ。いま、東京、横浜、名古屋、大阪、福岡、仙台、那覇にはHIVに関するパンフレットが置かれているコミュニティセンターがあるね。ここに行けばHIVに関する情報が掲載された冊子や、HIV陽性者の手記が多数置かれているし、いろいろな展示会やミニイベントもやっている。そこからほかのイベントの情報などにも広がっていくし、お茶を飲んだりしてるうちに、知りあいや友だちができるかもしれないね。ぜひ、一度、のぞいてみてください。

第6話のまとめ

不安を感じたり、告知を受けてショックを受けたとき、治療を受けていくなかで困ったことが起きたとき、 私たちにはさまざまなソーシャルリソース(社会的資源)があります。 相談サービス、ミーティング、コミュニティセンター、イベント……ぜひ、積極的に活用してください。

電話相談

感染不安向け(情報提供)、陽性者向け、ゲイの相談員がゲイに答える、外国語対応、薬物(ドラッグ)など、いろいろなものがあります。
匿名・無料で相談ができます。

対面相談できる場所

NGO、病院、行政(保健所や障害福祉窓口)など。

相談の現場にいる人たち

  • ソーシャルワーカー
    医療機関の相談室などで患者が利用できる社会福祉制度や生活面などでの相談に乗ってくれます。
  • ケースワーカー
    行政の福祉窓口で障がい者福祉の制度にかんして相談・支援してくれる人をこう呼ぶことがあります。
  • カウンセラー
    おもに心理面での相談に乗ってくれます。
    病院に詰めているカウンセラーもいますし、自治体が派遣するサービスを利用することもできます。
  • コーディネーターナース
    病院のHIVの専任看護師。
  • 保健師
    保健所などで住民への保健サービスに従事する専門家。

陽性者と出会う

NGOが運営する陽性者のためのグループやスペースがあります。
直接会うのがためらわれるときは、陽性者向けのブログや専用SNSもあります。
特定の個人ではなく、いろいろな人の意見を参考にするようにしましょう。

コミュニティセンター

仙台、東京、横浜、名古屋、大阪、福岡、那覇などには、だれでもが気楽に立ち寄れるコミュニティスペースが運営されています。これらのスペースは相談機関ではありませんが、情報収集には便利なスペースで、コンシェルジュ(よろず案内)的な機能ももっています。

イベント

コミュニティでは、HIV/エイズをテーマとしたさまざまなイベントが行なわれています。情報や友人を得るとてもよい機会となるでしょう。