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HIV/エイズの流行状況に新たな動きか?:2024年エイズ発生動向(確定値)より

October 20, 2025 Modified: 2025.10.20

2025年9月26日、厚生労働省より2024年エイズ発生動向報告(確定値)が発表されました。

HIVの流行状況は、2013年ころをピークとして減少傾向にありましたが、コロナ禍を契機としてこの数年あらたな動き見られるのではないかと考えられています。

ゲイバイセクシュアル男性にとって重要な健康課題であるHIVの流行状況を、最新の情報をもとに解説します。昨年の記事(2023年版)も併せてご覧ください。

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ゲイバイ男性にとってのHIV/エイズのいま【前編】~エイズ発生動向(2023年)から日本の現状を読み解く~
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https://hiv-map.net/post/hiv-aids-n…
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ゲイ・バイ男性にとってのHIV/エイズのいま【後編】~U=UやPrEPの登場、コロナ禍でHIV検査数が激減した影響は?~
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https://hiv-map.net/post/hiv-aids-n…
API-Net エイズ予防情報ネット
エイズ動向委員会「2024年(令和6年)エイズ発生動向年報」
API-Net エイズ予防情報ネット
https://api-net.jfap.or.jp/status/j…

再びHIVの感染拡大が始まったのか?

新たにHIV陽性とわかった人の数は、2013年ころから減少傾向にありました(グラフ1)。しかし、2022年は884人、2023年 960人、2024年 994人と再び増加しています(グラフ2)。

このような動きになっている理由のひとつは、新型コロナの流行による保健所のHIV検査件数の増減による影響です。2020年以降、全国の保健所が新型コロナに対応するために、HIV検査数は激減しました。そのため、この間にHIV陽性かどうかを確認する機会が減り、結果として新たにHIV陽性とわかる人の数が一時的に減ったのです。

しかし、その後に保健所でのHIV検査の件数はある程度は回復しました。HIV陽性とわかる人の数が増加に転じたのは、HIV検査の件数が再び増加したことが一因と考えられます。コロナ禍での「検査控え」の反動もあったのかもしれません。

その他にもいくつかの理由が考えられます。考えられる理由のひとつとして、感染する機会それ自体がコロナ禍明けに一時的に増えた可能性もあります 。これらを評価するためには、抗体の詳細な検査やウイルス遺伝子の詳細な解析などにより、HIVに感染してから早い時期に診断された人の割合を推定したり、コロナ禍に前後して人々の社会生活や行動がどのように変化したのかについても検討する必要があります。おそらく、新型コロナの流行は、HIV検査機会と性行動の両面に影響を与えている可能性があります。

2013年ころから新たにHIV陽性とわかる人の数が中長期的に減少傾向にあったのは、新たな感染機会が減ったためだと考えられています。HIVに感染している人の多くがHIV検査を受け、自分がHIV陽性と知り、抗HIV薬による治療を受け、U=Uの状態になると、もはや感染機会にはなり得ません。しかし、HIV検査の機会が減ると、自分がHIVに感染していることを知らない人が増え、治療を始めることはないのでウイルス量が高い状態のままとなります。こうしたことも感染機会が再び増える原因となります。

エイズ発症してはじめてHIV陽性とわかるひとの増加

こういった状況のなか、懸念されることが“エイズ患者”の数と割合がともに増えていることです(グラフ3)。

 “エイズ患者”の人数は、2022年は252人、2023年 291人、2024年 332人と増えているのです。しかも、新たにHIV陽性とわかる人数に占める“エイズ患者“の割合も高くなっており、2024年は過去20年間で最大の33.4%となっています。

これは、コロナ禍でHIV検査をする機会が減ったため、HIV検査をする機会がなかったり遅れてしまったりしたため、エイズ発症してはじめてHIV陽性とわかった人が増えたということが言えます。全国的にこうした傾向にありますが、地域差が大きいのも特徴です。特に、コロナ禍でHIV検査数が大きく落ち込んだ地域では、“エイズ患者“の割合が40%を超えているところもあります。

HIV検査を定期的に受け、自分がHIV陽性か陰性かを知ることのメリットはとても大きくなっているので、誰もがもっと気軽にHIV検査を受けるようになることが重要です。

今後の動向を注意深く見る必要がある

日本では、コロナ禍に保健所でのHIV検査件数が激減したのと同じくらいのタイミングで、ちょうどPrEPが普及していったという実情があります。また、コロナ禍に郵送検査とともに、PrEPの普及にともなうクリニックでのHIV検査も増加しました。今後は、保健所でのHIV検査だけでなく、こうした状況を踏まえてHIV検査とHIVの流行状況の関連を読み解いていく必要があります。

また、多くが国内でHIV感染している日本語を母語としない人について、HIV関連の情報提供や支援の状況などを踏まえて、よりきめ細やかに動向を注視していくこと、今後は一層重要となるでしょう。

最後に、新たにHIV 陽性と診断された人数が再び増加していることが、中長期的に続くものなのか、それとも一時的なものなのかは、専門家の間でも結論が出ていないようです。そのため、今後の動向を引き続き注意深く観察していく必要があります。

編集:HIVマップ制作チーム
協力:国立感染症研究所
厚生労働行政推進調査事業費補助金 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業「エムポックスの流行拡大に備えた診療・感染管理指針の作成と普及啓発についての研究」

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