エピソードは、個人の体験談です。
梅毒感染エピソード①「セフレや恋人に伝える?」(30代後半 男性・on PrEP) 篇・前
February 28, 2023 Modified: 2024.09.24
- 書いたひと
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松竹梅雄(しょうちくうめお)※仮名 さん
30代後半・男性
ちょうど3年くらい前、俺は友達からPrEPについての話を聞いていた。
PrEPというのはHIVウイルスの感染を予防できる薬の飲み方、およびその予防薬のことだ。
その友達はもともと生でエッチをするのが大好きで、たまに性感染症で悩んでいたような子だったが、HIVにはまだ感染していなかった、らしい。
だから彼はその登場を心から喜んでいた。おPrEP様のパワーを余すことなく享受するため、夜な夜な種種(たねたね)したところに通っており、めちゃくちゃ楽しい〜と言っていた。
猥談が好きなのでとても興味深く聞いたけど、わりとドン引きもしていた。
とはいえ、自分もウケを15年くらいやっていると、基本はゴム付き〜とは言っていたものの、なんか3回くらいやったら許しちゃったり(でも付き合ったりレギュラー化したりするならいちおう検査はそれぞれ行く お互いへの結果の告知は性善説を採用)、
「検査してるから大丈夫だよ」(いつしたんだよ 潜伏期間どうなるんだよ と思いつつも受け入れる)など、まあまあ気をつけているつもりでも、それなりに油断もしてリスキーな行為をしたこともあった。
でもそれまでは性病らしい性病にかかったことはなかった、はずだ。
けっこうセーフ派だし、年に1〜2回、HIV・梅毒・B型肝炎の検査は受けていたし、でもさっき書いた通り油断もそれなりにしているわけで、結果告知の瞬間は毎回それなりにドキドキしていた。薬で完治する病気ならまだしも、せめてHIVからは身を守りたい。
……ということは、俺にとってPrEPってダブルインシュアランス(二重の保険)じゃん
ええやん!
ドン引きしたことなどスッと忘れて、某輸入代行おくすりサイトでPrEPに使う薬を購入。
毎日生でパスパスやるわけではないので、予防効果は少し落ちるようだがオンデマンド方式を採用した。薬、1個200円とかだし。
この貧乏性のせいなのか、二重保険として考えていたはずのPrEPが「飲んだからつけなくても大丈夫じゃね?」という考えに転換するのに時間はかからなかった。
友達のように種種(たねたね)したヤリ部屋に潜伏して幸せを感じる、といったことはなかったものの、それまでセーフでやってたレギュラー陣のセフレとゴムをつける頻度は減っていった。
それなりに楽しくやっていたものの、10ヶ月目の定期検査の時、梅毒に感染していることがわかった。
まず、うわ、めんどくせえ。と思った。
検査機関から紹介された病院に行くことも面倒だし、そして、レギュラー陣(そしてわかる限りのセックス相手)に連絡をしなければいけない。
しかし梅毒の潜伏期間は最長2ヶ月。つまり10ヶ月ぶりの検査ということは、12ヶ月前からの性交渉が梅梅(うめうめ)していた可能性があることになる。レギュラーセフレ+行きずりの人数を思えば、きっとちょっとしたラグビーチーム(入れ替え選手含む)という感じではないだろうか。俺の身体を通り過ぎていったオールブラックス(希望)が、「UME!UME!ウォー!」と高らかにハカを踊り出す。
しかも、自分に自覚症状はない。みんなもきっとないだろう。
とはいえ連絡はしないと仕方がない。おそるおそる最新順からのオールブラックス・レギュラー陣にLINEを乱れ打つ俺。
さすがお盛んな百戦錬磨の猛者が多かったからか
「ありがとう!検査行ってくるね!」といった返事が9割。
そして何人かは陽性で、何人かは陰性で、とのちに結果報告もしてくれた。
病気は天下の回りもののため、もし俺の相手のタチの誰かにうつってたら、自分と同じような見た目のウケにも感染して、そしてそれを狙うタチにもまた……と考えるときりがないのだが、そういう可能性は無限にあると思う。
「クラスタ」なんて言葉があるけど、それなりにセックスやれてるお盛んな人はめちゃくちゃいろんな人の相手になっているので(しかも「リバ」とかもたくさんいるわけで)我々は一度誰かが病気になったら、なるべくその“クラスタ”で可能な限り検査に行って、できるだけみんないっぺんに治っとけばいいじゃん?という気持ちがある。ワンチームというやつだ。
HIVマップ制作チームからのコメント
PrEPについて
PrEPは、HIVに感染していない人が抗HIV薬を予防として服用し、セックスでのHIV感染を防ぐ方法です。コンドームなどと並んで有効な予防方法のひとつですが、注意すべき点もあります。
梅毒について
梅毒は、症状も診断がつくタイミングもさまざま。感染力が強く、性器の接触など幅広い性行為で感染します。抗生剤による治療方法が確立されていますが、何度でも感染するやっかいな性感染症です。自分が治癒しても、セックスの相手に検査・治療を受けてもらわないと、再び相手から感染する「ピンポン感染」という現象がコミュニティ内で連続して起きる可能性もあります。
現在、日本では梅毒が大流行しています。