ゲイバイ男性にとってのクラミジア・淋病 ~タチとウケでは検査方法が異なる?~
September 1, 2023 Modified: 2024.10.19

クラミジアや淋病(淋菌)は抗生剤で治療できる病気なので、それほど深刻に考えていないひとも多いのではないでしょうか?
最近では、クラミジアや淋病が直腸に感染しているゲイバイセクシュアル男性が、より高い確率でHIVに感染することがわかっており、再び注目されている性感染症です。
しかし、感染経路や検査方法について、男女のセックスを前提として説明されていることがほとんどで、役に立たないばかりか誤解を招くこともあるようです。そこで、ゲイバイセクシュアル男性に役立つクラミジアと淋病の情報をまとめてみました。
どうやって感染するの?
クラミジアや淋病は、病原体がいる粘膜や病原体を含む体液(精液、分泌物、尿、唾液等)に粘膜が触れることで感染が成立します。病原体は、男性器・女性器だけでなく、のどの粘膜、直腸の粘膜にもいる可能性があります。コンドームなしのアナルセックス、オーラルセックス(フェラチオなど)、性器のこすり合わせ(かぶと合わせなど)、眼の周囲への射精など、幅広い性行為にリスクがあるのが特徴といえます。
さらに、ポジションによって主に感染する部位が異なります。
- アナルセックス(タチ):男性器
- アナルセックス(ウケ):直腸
- フェラチオをされる側:男性器
- フェラチオをする側:のど
- アナルリミング(アナル舐め):のど
- かぶと合わせ:どちらも男性器
症状があったりなかったり?
淋病は比較的はっきりとした症状が出ることが多いのですが、クラミジアは症状がまったくないことが多いので注意が必要です。症状がないため、自身が感染していることに気づかないまま、セックスの相手に感染させしまうことがあるからです。こうしたことは、定期的に検査をすることである程度は防ぐことできます。
また、クラミジアや淋病の症状は、病原体のいる部位(性器、のど、直腸など)によって異なります。そのため、ゲイバイセクシュアル男性の場合、アナルセックスのタチ/ウケ、オーラルセックスのフェラチオをする側/される側によって、主な症状と部位が異なるのです。
クラミジア | 淋病 | |
---|---|---|
男性器 | [クラミジア性尿道炎] 尿道の違和感・ムズムズ感、尿道から分泌物がでることもあるが、症状がないこともある。 | [淋菌性尿道炎] 排尿するときの痛み、尿道の灼熱感、尿道から膿(うみ)がでる(白色、黄色、緑色)など、比較的強い症状がでる。 |
のど | 症状がないことがほとんど。 | [淋菌性咽頭炎] のどに軽い痛み・違和感があることもあるが、症状がないないことも多い。 |
直腸 | 症状がないことがほとんど。 | 症状がないことがほとんど。 |
検査方法はいろいろある
尿検査、うがい液の検査、のどの粘膜/直腸の粘膜を綿棒でこすり取る検査などがあります。本来は、どのような性行為があったかによって病原体のいる可能性の高い部位(男性器、のど、直腸)が異なるため、優先順位の高い検査が異なります。
医療機関で行う淋菌・クラミジアの検査は、通常は尿またはのどの検査となります。アナルセックスを行っている場合には、直腸に淋菌・クラミジアが感染している可能性がありますが、直腸の淋菌・クラミジア検査は未承認(2023年7月現在)のため、検査を実施している医療機関は限られます。ゲイバイセクシュアル男性の検査・治療の実績を参考に、理解のある医療機関を探すことが大事になります。また、アナルセックスのウケ、フェラチオをする側の男性は、有効な検査をしてもらうために、思い当たるリスクを自分から医療者に伝える必要があるかもしれません。
また、保健所などで行っている検査の多くは尿検査ですので、アナルセックスのタチやかぶと合わせなどの性行為による男性器への感染については有効な検査です。しかし、アナルセックスのウケやフェラチオをする側のリスクには対応していないことを知っておく必要があります。

治療方法と再感染防止
クラミジア・淋病と診断された場合、それぞれに有効な抗生剤によって治療することができます。治療によって完治しますが、免疫ができないので何度でも感染する可能性があります。また、PrEPではクラミジア・淋病を予防することができませんので、コンドームを使用することや定期的な検査・治療を習慣化するなどの工夫も必要でしょう。男性どうしでセックスをする人は、クラミジア・淋病の検査を1年に1回以上、複数のセックス相手がいる人は3か月~6か月に1回は受けることを習慣づけましょう。
セックスの相手からの再び感染する「ピンポン感染」を防ぐためにも、潜伏期間中にセックスをした相手(クラミジアは1~3週間、淋病は2日~1週間)にも検査・治療をしてもらうことが重要です。症状がなかった場合には潜伏期間がいつからいつまでかがわかりませんので、念のため60日までさかのぼってセックスした相手に検査をしてもらうとより良いでしょう。
また、クラミジアと淋病は重複感染していることもあるので、同時に検査できる方法で検査を受けることをお勧めします。さらに、クラミジアや淋病に感染しているひとは他の性感染症に感染している可能性が高いため、HIVや梅毒の検査を受けることが大切です。特に、直腸内のクラミジア・淋病感染がある場合には、HIV感染する可能性が高いことがわかっていますので、HIV検査を受けたほうが良いでしょう。


検査や治療はどこでできる?
性感染症クリニック、泌尿器科などで検査と治療を受けることができます。
自由診療のクリニックなど
検査・治療ともに自由診療扱いのクリニックの場合は、検査費用だけでなく治療費も全額自己負担となります。
保険診療のクリニック・病院
症状がある場合の検査や治療は保険診療となり3割負担。症状がない場合には、検査は自由診療となり全額自己負担、治療については保険診療となるので3割負担となります。
また、保健所でのHIV検査の際にセットでクラミジア・淋病の検査(おもに尿検査)を受けられるところもあります。


テキスト・文責:HIVマップ制作チーム