エムポックス(旧称:サル痘)WHOによる2024年8月の緊急事態宣言、意味するところは?
August 27, 2024 Modified: 2024.08.27
2024年8月14日に、WHOがエムポックスに関する2回目の緊急事態を宣言しました。
このことはなにを意味するのでしょうか?
エムポックスには2つのグループ(クレードⅠとクレードⅡ)があることを知っていますか?
感染の広がりかたや流行状況が異なる2つのグループの違いを理解していますか?
まずは情報を整理してみましたので、落ち着いて読んでください。
エムポックスのウイルスには起源の異なる2つのグループがあり、クレードⅠ、クレードⅡと呼ばれています。クレードⅠとクレードⅡはそれぞれが別々に流行しており、現時点では流行状況や感染の広がりかたにも異なる特徴があると考えられています。
■クレードⅡ
クレードⅡは、もともとは西アフリカ(ナイジェリアやガーナなど)で流行していたものですが、2022~2023年にかけて欧米を中心にゲイ・バイセクシュアル男性の間で感染が拡大し、日本でも2023年の春を中心に流行しました。世界的な感染拡大にともない、2022年7月にWHOが緊急事態を宣言しました。その後、世界的には報告数が減少に向かい、(一部の国・地域では流行が続いているものの)2023年5月に緊急事態の終了が宣言されました。
日本では、248人のクレードⅡ感染が報告され、そのほとんどが男性でした。2024年に入ってからは散発的な報告がある程度にまで減少しています(2024年8月23日現在)。
■クレードI
クレードⅠは、アフリカ中央部にあるコンゴ民主共和国で流行が始まり感染が拡大、いままでに同国で4,480人の感染が報告されています(WHO 2024年8月18日現在)。性的接触や家庭内感染などの濃厚接触がおもな感染経路で、クレードⅡのようにゲイ・バイセクシュアル男性での流行が起きているわけではないと思われますが、現地で収集できる情報に限りがあり、実際のところまだわからないことが多い状況です。また、クレードⅡよりも感染しやすく、重症化しやすいというデータもあります。
2024年には近隣のケニアやウガンダなどにも伝播し、8月14日にWHOが今後の世界的な感染拡大を懸念して2回目のエムポックスに関する緊急事態を宣言しました。それにともない、8月15日に外務省は、コンゴ民主共和国やケニアなど7か国を対象に感染症危険情報(レベル1:十分注意してください)を発出しました。
特に、アフリカ地域ではクレードⅠがこれからさらに感染拡大することが懸念されます。該当地へ渡航する場合には、エムポックスの予防を心がけてください。予防方法はクレードⅠもクレードⅡと同じで、症状のある人とその飛沫・体液に触れることを避けること、手指の消毒をすることなどが推奨されています。また、エムポックスは、もともと動物から人へと感染していたのが、人から人へと感染するようになったものと考えられています。現在でも動物から人へと感染しますので、渡航先でウイルスを持っている可能性のある動物に触れることを避けることも重要です。なお、渡航にあたり事前の予防ワクチンは日本では接種できません。
また、8月15日にスウェーデンで、22日にタイでアフリカ渡航者のクレードⅠ感染が確認されています。今後は、日本を含むアフリカ以外の地域でも注意をする必要があります。現時点でクレードⅠでは、クレードⅡのようなゲイ・バイセクシュアル男性での流行が起きているわけではないと思われますが、もしも世界的に感染拡大した場合には、アフリカでの流行状況や感染の広がりかたとは異なる様相を示す可能性もないわけではありません。引き続き注意深く情報収集をして発信していく予定です。
編集 : HIVマップ制作チーム
協力 : 感染症コミュニケーション円卓会議
厚生労働行政推進調査事業費補助金 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業「エムポックスに関するハイリスク層への啓発及び診療・感染管理指針の作成のための研究」