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射精ありなし、ゴムorナマでどれくらい変わる?―HIV感染の確率と、それを下げる方法

November 15, 2023 Modified: 2023.11.15

アナルセックス? フェラチオ? バニラ?
どんなセックスが好きなのかはひとそれぞれでしょう。

それでは、HIVに感染する確率は何によって決まるのでしょうか。
性行為の種類だけでなく、さまざまな要因によってHIVに感染する可能性が異なることがわかっています。

今回は、あらためてHIVに感染のリスクとなる要因を整理してみましたので、ご自身のセックスを安心して楽しむための参考としてみてください。

予防をしない場合の感染率(性行為別)

アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は、下記のように感染率を算出しています。2015年に発表された理論上の推定値ですので、あくまでも目安としてご覧ください。

HIVに感染するリスク行為ごとの推定確率

アナルに挿入される1.38%
アナルに挿入する 0.11%
膣に挿入される0.08%
膣に挿入する0.04%
オーラルセックス(する側/される側) データなし(とても低い)
アメリカ疾病予防管理センター(CDC: Centers for Disease Control and Prevention)

アナルセックスのウケがもっとも感染率が高く、次いでアナルセックスのタチ、膣性交の挿入される側、膣性交の挿入する側となっています。肛門や直腸は粘膜が薄く傷つきやすく、感染を起こしやすい部位といえます。そのため、アナルセックスでの確率が高いのです。一方、口や喉の粘膜は比較的厚く感染が起きにくいため、オーラルセックスはこの推計ではとらえきれないほど低いとされています。

もっとも高いアナルのウケでも、10,000回で138回の感染が起き得るという推計結果です。非常に少ない確率に見えますが、小さなリスクでも時間の経過とともに積み重なっていくため、生涯リスクははるかに高い確率となることに注意すべきでしょう。

また、射精がある(中出し)場合には、射精がない場合よりも、ウイルスを含む体液に多くさらされることになるため、ウケ側/挿入される側のリスクはより高くなると考えられます。

感染ルートとその理由

HIVのウイルスは血液、精液、膣分泌液、母乳など一部の体液に含まれています。また、腸粘膜から出てくる粘液や、精液が混ざることもあるカウパー腺液(さきばしり/がまん汁)にもウイルスが含まれていると言われています。それらの体液が粘膜や皮膚の傷などを通して侵入すると感染が起きる可能性があります。

そのため、HIVの感染ルートは限られていて、①セックスによる感染(性感染)、②血液を介した感染(注射針の共有など)、③母子感染(産道感染など)の3つと言われています。

一方、唾液、汗、涙、尿などにはほとんどウイルスが含まれないため、飛沫感染や接触感染はしないので日常生活での感染は起きません。

感染率は何によって変わる?

セックスによる感染といっても、感染する確率はいくつもの要因によって変わります。
主な要因としては、例えば次のようなものが考えられるでしょう。

  1. どのようなセックスをしたか(アナルセックス、膣挿入、フェラチオなど)
  2. 予防をしていたかどうか(コンドーム、PrEPなど)
  3. 体内に侵入したウイルスを含む体液の量はどれくらいか(射精・中出し、出血があったか)
  4. HIVに感染している人のウイルス量はどれくらいか
  5. 他の性感染症にかかっているかどうか(梅毒、クラミジア、淋病など)

ウイルス量と感染率の関係

HIVは、体内のウイルスが多いほどセックスで感染が起きる可能性が高くなり、ウイルスが少ないほど感染が起きる可能性が低くなると言われています。

現在ではHIVの治療方法が確立されていて、HIV検査で陽性とわかると、抗HIV薬(※)による治療によって体内のウイルス量を低く抑えることができます。しかし、HIV検査を受けないとHIV陽性かどうかはわからないので、HIV治療を受けることはありません。その状態では、体内のウイルス量は高い水準で推移することがほとんどです。特に、感染してすぐの時期はウイルス量が非常に高くなるため、とても感染が起きやすい状態と言えます。しかし、感染直後にHIV検査を受けて陽性とわかる人はけっして多くありません。つまり、本人が感染していることを自覚していない時期にこそ感染力がもっとも高いかもしれないのです。

HIV陽性の人の治療のために使用する抗HIV薬は、PrEPで使用するものとは異なりますので注意が必要です。

一方、抗HIV薬による治療を続けているHIV陽性の人は、血液中のウイルス量を検査で検出できないほど少なく抑えることができます。通常は、飲み始めてから1~6ヵ月で検出限界未満になります。さらに、この状態を最低6ヵ月以上持続できていれば、セックスによって相手にHIVを感染させるリスクはゼロとなります。このような状態をU=U(Undetectable = Untransmittable)といい、コンドームやPrEPなどの予防なしのセックスにおいても感染しません。

aids-mapには、ウイルス量と性行為を組み合わせた感染率を掲載しています。こちらも参考までにご覧ください。

コンドームなしのアナルセックスの推定の感染率

アナルに挿入される1.38%
アナルに挿入される(挿入する人のウイルス量が検出限界未満)0.00%
アナルに挿入する0.11%
アナルに挿入する(挿入される人のウイルス量が検出限界未満)0.00%
NAM aids-map
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梅毒やクラミジアはHIVの感染率を高める

他の性感染症にかかっていると、HIVに感染する可能性は高くなります。

例えば、梅毒にかかって性器に潰瘍(かいよう)ができたり、クラミジア・淋病や性器ヘルペスなどに感染していると粘膜に炎症が起きたりするため、粘膜を通して感染が起きやすい状態になります。特に、最近では直腸内のクラミジア・淋病の感染がある日本のMSM(男性とセックスをする男性)の研究報告が増えています。さらに、これらの感染がある場合には、HIV感染する可能性が高いこともわかっています。

他の性感染症にかかった場合には、HIVに感染している可能性が高まっていたと考えて、HIV検査も受けるようにすべきでしょう。

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予防行動でさらに感染率を下げる

HIVの予防方法には、コンドームやPrEPなどの複数の方法があります。それぞれに有効性が確認されていますので、正しい方法で活用すれば高い予防効果があると考えられます。つまり、感染率を大きく低減させる効果があることは間違いありません。

しかし、コンドームのつけ方が間違っていたり、途中で外れたり破れてしまったりすることもあります。PrEPでは、服薬を忘れたためにHIV感染したケースなども報告されています。また、正しい予防方法を知っていても、相手まかせになってしまったり、薬物使用の影響で予防ができなかったり、さまざまな難しさをともなうことが少なくありません。

現実的にはどの予防方法をとってもヒューマンエラーがあり得るのですが、だからこそ、自分に合った方法を見つけて、より安全な(セーファー)な性生活(セックス)ができるように工夫をしてみてはいかがでしょうか?

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