エムポックス(サル痘)が日本で感染拡大 ~現状を知って感染リスクを下げよう~
February 25, 2023 Modified: 2024.08.26
2023年夏時点の情報をもとに【クレードⅡ】について書かれた記事です。ご留意いただきお読みください。
2023年08月08日更新

エムポックス(サル痘)は、もともとはアフリカの一部の国々の、主に動物から人間に感染する病気として知られていました。しかし、2022年5月以降、欧米を中心に人間から人間への感染が続いています。世界中で広がっているエムポックス(サル痘)は、性別やセクシュアリティに関わらず誰でも感染する可能性がある感染症ですが、今回の流行の重要な特徴は、男性同士の性的接触による感染が多く報告されていることです。
日本でエムポックス(サル痘)の感染が急増している

厚生労働省のmpox最新報告はこちら
(サル痘報道発表資料 |厚生労働省 (mhlw.go.jp))
日本国内では、2022年は月に1~2人くらいでしたが、2023年に入ってから急増しています。3月は70人、4月は27人、5月は40人台(未確定)と高止まりしており、収束の見通しは立っていません。6月4日までの感染者は計175名で、全員が男性でした。20代・30代・40代が多数を占めていますが、10代~70代まで広い世代で感染が報告されています。また、首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)の在住者が多く報告されていますが、その他の地域(茨城・静岡・愛知・大阪・兵庫・奈良・香川・徳島・高知・沖縄)でも報告されるようになりました。
2023年に報告されたほとんどが海外渡航歴のない人で、国内での感染拡大が起きていると考えられています。欧米では落ち着きを見せつつあるエムポックス(サル痘)の流行が、日本を含む東アジアで本格的な流行に入る可能性があり、特に男性同士でセックスをするときには充分な注意が必要です。
エムポックス(サル痘)から身を守るために、症状・検査・治療のこと、どうやって感染するのかを正しく知り、一人ひとりができる予防方法についても考えてみましょう。
エムポックス(サル痘)の症状は?
エムポックス(サル痘)に感染してから症状が出るまでの潜伏期間は、通常は1~2週間(6~13日程度)です。
症状のあらわれ方は、人によって様々です。主な症状である発疹(ブツブツ)は全身の様々な場所にできますが、性器や肛門の周辺にできることが多いです。喉や肛門の内側などの見えにくい場所にできることもあります。発疹の痛みは、感じる人も感じない人もいます。
発熱、寒気、リンパ節の腫れ、倦怠感(だるさ)、頭痛、筋肉痛などがあらわれる人もいますが、これらの症状がないからと言ってサル痘に感染していないとは限りません。また、発熱や倦怠感だけを感じることもあります。
エムポックス(サル痘)の治療は?
発症してから2~4週間で自然に治ることが多いのですが、入院や自宅療養などで、症状に応じて緩和する治療を行います。発疹(ブツブツ)がかさぶたとなって落ちるまで、約3週間は感染のリスクがありますので、他人の肌への接触をひかえることが大切です。
気になる症状がある場合は、病院やクリニックなどに相談することをおすすめします。相談の際は、「サル痘の感染を心配している」ことを伝えるようにしましょう。エムポックス(サル痘)は梅毒や水痘(みずぼうそう)など発疹(ブツブツ)のある他の疾患と症状が似ている場合があり、症状のあらわれ方も人によって様々です。エムポックス(サル痘)の可能性を医師に伝えることでより早く的確な診断につながるでしょう。

どうすれば予防できる?
感染経路
- 感染している人の発疹、カサブタにさわること。
- 体液にさわること。
- 肛門、直腸、膣などの粘膜に直接さわったり、舐めたり、挿入すること。
- 長時間対面で呼気による飛沫にさらされること。
これらがおこりやすい性的接触による感染が、今回の流行で全体の約7割と高い割合を占めています。
感染リスクを下げる方法
- 感染している人との接触の機会を減らすこと。
- 特定の相手とだけセックスをするようにしたり、セックスの相手の数を少なくする。
- 相手と自分の身体にブツブツなどの異変がないかを事前に確認する。暗くて確認ができない状況でセックスをはじめるのは控えたほうがいいでしょう。
- 完全ではありませんが、粘膜の接触のリスクを減らすためコンドームを使う。アナルセックスだけでなく、オーラルセックスでも使うことをおすすめします。エムポックス(サル痘)の発疹は口の中や肛門の内側など、気づきにくいところにできることもあります。
- 感染している人の使った寝具やタオルには、発疹の中身やカサブタなどがついてしまうことがあります。直接触ることよりもリスクは低いですが、寝具やタオルなどを共有することは避けましょう。
完全にエムポックス(サル痘)の感染リスクをゼロにすることは難しいですが、複数の相手や不特定の相手とセックスをする場合でも、上記のようなことを試みることでリスクを減らすことができます。
Q&A
Q1. 子どもの頃に天然痘ワクチン(種痘)を受けたことがある人は、エムポックス(サル痘)には感染しない?
A1.
このワクチンはエムポックス(サル痘)に対しても感染や発症を防ぐ効果がある程度はあると考えられています。
1976年ごろより前に日本で生まれた人
多くの人が子どものころに天然痘ワクチン(種痘)を受けています。しかし、接種から時間が経っており、今の時点までどの程度の効果が続いているかはわかっていません。接種の経験があるのにウイルスを防ぐ抗体ができていなかった例や、接種を受けた世代の方の国内での感染も知られています。子どものころにワクチンを打っていても、感染するリスクはゼロではないと考えることをおすすめします。
1976年ごろより後に日本で生まれた人
日本で1976年ごろよりも後に生まれた世代は、種痘を受けていない人がほとんどです
Q2. エムポックス(サル痘)かどうか自分で判断できますか?
A2.
自分ではサル痘かどうか判断はできませんので、エムポックス(サル痘)に感染したかもしれないセックスがあった場合、発疹などの症状がある場合には、病院やクリニックを受診しましょう。エムポックス(サル痘)の症状は梅毒や水痘(みずぼうそう)などと似ており、検査をしないと診断がつきません。医療機関で、発疹やかさぶたなどから検体を採取し、地方衛生研究所または国立感染症研究所でサル痘ウイルスの検査(PCR)を行います。
Q3. エムポックス(サル痘)の治療は新型コロナのように公費でまかなわれるのですか?
A3.
治療費は一般的な受診や入院と同様に必要になります。
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HIVマップでは、厚生労働省、厚生労働科学研究班等の依頼に基づき、ゲイ・バイセクシュアル男性の性の健康にとって重要な注意喚起として、当記事を掲載いたします。
編集 : HIVマップ制作チーム
協力 : 国立感染症研究所
厚生労働科学指定研究事業「バイオテロ対策のための 備蓄されている細胞培養痘そうワクチンの備蓄等,バイオテロ 病原体への検査対応,公衆衛生との関連のあり方に関する研究」