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エピソードは、個人の体験談です。

エムポックス(サル痘)検査エピソード 「検査はどうやって受けられる?」

October 27, 2023 Modified: 2023.10.25

書いたひと
おだQ

おだQ さん

30代・男性

エムポックス(サル痘)の症状と思わしき発疹があり、総合病院で検査を受けました。

2023年4月ごろ、SNSでエムポックスの国内感染者数が推計100人を超えたというニュースが流れていました。名前こそ耳にはしてしましたが、当時の私は対岸の火事を見るかのような感覚でしたし、そこから情報を追うこともありませんでした。

体に異変を生じたのは、そこから1週間ほど経ったタイミングです。朝のトイレを済ませ、便座から立ち上がる際に、ふとももに赤い斑点のようなものができていることに気付きました。虫刺されでもなければ皮膚のかぶれにも見えないそれは、私に一抹の不安を植え付けました。

「これはもしかすると、(エムポックスの)症状なのでは?」

焦燥感に駆られた私は、ベッドに戻るとスマホを手に、矢継ぎ早にエムポックス関連の記事を読み漁りました。結果、自分の発疹は、エムポックスによるものと見た目が近かったのです。

私は、エムポックスだと仮定して行動すべきだとスイッチを切り替えました。患部に触れると他の箇所にも発疹が広がると考え、すぐに耐水性のバンドエイドを貼り付けました。加えて、以前骨折した際に用いた包帯のあまりを足に巻き付けます。適切かどうかはわかりませんでしたが、ゾンビパニック映画の登場人物がおこなう応急処置のように感じて、不思議な高揚感がありました。手元にウォッカがあったら口に含んで吹き掛けんばかりの、アドレナリンがドバドバ状態です。次に調べたのは「どこで診てもらえるのか」でした。

東京都による情報サイトによると、私が住んでいるエリアでは、電車で15分ほどの場所にある総合病院で診断が可能と表記されていました。早速電話するも、「まずは保健所に問い合わせください」という回答が。指示に従います。

エムポックス感染者のうち、ゲイとバイが占める割合が多いという報道が既にされていたので、保健所のスタッフからは「差し支えなければでいいのですが」という前置きがあったうえで『男性との性交渉が直近であったか』の質問がありました。私の答えは以下のものです。

「私はゲイですが3ヵ月近くは性交渉をしておりません。しかし、男性同士での食事やマスクなしでの会話を最近よくしています」

いざ言葉にしてみると、回りくどかったです。「直近の性交渉はない」ときっぱり言えばいいのに、「性交渉以外にも男性同士の楽しいコミュニケーションはあるし、それを謳歌しています」と主張しているかのようです。当時の私は混乱もしていましたし、しどろもどろに答えた記憶があります。

10分ほど話した結果、電話だけだと判断が難しいため総合病院に繋いでもらい、検査の日程を設けてもらうことになりました。電話をして2日目の昼なので、とても迅速なご対応だったように思います。バンドエイドと包帯は定期的に交換しましたが、患部を不用意に触るのはリスキーだと考え、状態をあまり確認しないまま当日を迎えることとなります。

総合病院の裏口にあたる場所から入り、検査を受けることとなりました。発熱があるコロナ患者の方と対応は近かったように思います。担当医の方に症状(ふとももに大きめな発疹があることぐらいでしたが)を伝え、処置台に横たわってズボンをおろしました。上は着衣、下はパンツ一丁という状態です。オンラインゲームの初期アバターみたいな感じです。バンドエイドを剥がそうとすると、「少しだけお待ちください」と医師からストップが入ります。2、3分後、医師は防護服を着た状態で戻ってきました。感染させるリスクがある状態で無配慮な行動だったな、と反省。

触診をしつつ、医師は足のほかの部位に発疹が広がっていないか入念にチェックをおこないました。腕を組み考えあぐねている様子の医師は、内線であれこれ指示を出し、ふたたび私一人だけが病室にいる待機状態に。「次は血液検査だろうか」と考えていると、ドアが開きました。医師、医師、めっちゃ偉い感じの高齢の医師、医師、医師というメンツです。さながら令和版白い巨塔と言ったところでしょうか。そもそも、この病院では初のエムポックス検査とのことで、専門医が集ってめっちゃ偉い感じの医師の診察を見学する、という流れのようでした。大学病院では研修医による見学がおこなわれる場合があるので、それの上位版という認識でした。

防護服に身を包んだ医学会のエリートたちの前に横たわる薄着の私が、さながら何かの人体実験のように思えてくるなか、診察がスタートしました。偉い感じの医師は手慣れた様子で私の患部をチェックします。2、3分ほど経った頃でしょうか。医師は重く閉ざしていた口を開きます。

「これは……おできですね」

予想外の言葉。おでき。たちまち、私の顔が少女漫画のヒロインのようにカーッと赤くなります。現実、現実が直視できない……頭がフットーしそう。医師たちがぞろぞろと診察室をあとにすると、最初の医師が優しい微笑みを浮かべ、声をかけてくれました。

「気になって検査に来たことは、すごく意味のあることですからね。行動に移したのはとても立派なことです」

以前、近所で虐待と疑わしき児童の泣き声が聞こえ、通報した過去があります。事実は子どものイタズラでしたが、そのときの警官からも似たようなことを言われた記憶があります。「やること自体に大きな価値がある」的な言葉でした。

次も、似たような症状があったら保健所に電話しようと思います。不安な気持ちを取り除く近道は、行動だと信じて。そして、検査にご協力くださったすべての関係者に感謝します。なので、おできで検査に行ったこと、許してください! ぎぇ~!

HIVマップ制作チームからのコメント

エムポックス(サル痘)の発疹(ブツブツ)は全身のさまざまな場所にできますが、性器や肛門の周辺にできることも多く、喉や肛門の内側などの見えにくい場所にできることもあります。発疹の痛みは、感じる人も感じない人もいます。その他、発熱などの症状があらわれる人もいますし、あらわれない人もいます。つまり、症状のあらわれ方は人によってさまざまなのです。

また、エムポックス(サル痘)は、梅毒やみずぼうそうなどの発疹のある他の病気と症状が似ている場合があります。発疹ができても自分では何の病気かわからないことも多いでしょう。また、精神的に落ち込んだり恐怖感を覚えたりすることも少なくありません。まずは落ち着きましょう。そのうえで、皮膚科などを受診して、必要に応じて検査や治療を受けることがとても重要となります。

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エムポックス(サル痘)は、世界的には2022年の夏をピークとして減少傾向が続いてきました。日本では2023年の春をピークとして減少傾向が続いているかに見えますが、その後も感染報告が散見されており、終息したわけではありません。WHOが発表している直近12週間(2023年9月22日現在)の国別感染者数トップ10では、中国(1位)、タイ(2位)、韓国(9位)となっており、日本を含む東アジアでの感染状況に、今後も注視する必要があります。

WHO
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